安定したストーリー構成と読みやすい絵のベテラン漫画家 高梨みつばの作品。
本当は60歳の如月澄(きさらぎ すみ)が「青春をやり直したい」という望みを叶えられ、17歳から人生をやり直す。単なる恋愛ものではなく、何が大切なことなのか、人生の岐路に立つ時に背中を押してくれる珠玉の名作。桐谷美玲と松坂慶子のW主演でドラマ化もされている。
みなさんこんにちは。
今回は、王道の少女漫画です。
私は漫画家さんて本当にすごいと思うのですが、
何がすごいって、映画だったらプロデューサー、監督、脚本家、俳優、美術、衣装、編集etc がいるところを、漫画家さんはひとりでそれらの役割を担当するところが本当にすごいですよね。
今回は特にストーリーだけでも奥深い珠玉の一作でありながら、60歳の澄と17歳のスミレのそれぞれの人生の時代背景も説得力を持たせる作者の技量に感服です。
結構ね、少女漫画も奥が深いですよね。
私は、「りぼん」も好きでしたが、「花とゆめ」の、恋愛要素が少なめの作品が結構好きでしたね(成田美名子さんとか、羅川真里茂さんとか)。
さて今回は…
恋愛要素多めです。
だけど、それだけじゃないんです!!
はっきり言って、「進路に悩む若者にも読ませたい」ほど、人生において大切なものが描き切られています!!
ストーリーは、両親と祖母の介護に追われ、気付いた時には60歳になっていた主人公・如月 澄(きさらぎ すみ)が、屏風に閉じ込められていた異形の者・黎(れい)によって17歳に若返るところから始まります。
澄の実家は花農家で出荷の時期など家業が忙しく、高校も中退を余儀なくされ、60歳で母親を看取るまで家族のために尽くしました。青春時代に後悔を残したまま年を取ってしまったため、
「17歳になって 青春を楽しんでみたい…!」
と訴えたのです。
屏風の呪いを解きたい黎は、澄の願いを叶えてやります。
ひとりの乙女が「生きてて良かった」と心から願うことが呪いを完全に解く条件だからです。
と、ここで、注目ポイントは黎のかっこよさですね。
一応黎も昔の人間(いつかわからないけど、着物が普段着だった頃)なので、着物で登場します。
見た目は、おそらくX-JAPANのHIDEさんがちょっと入っているというか、前作の「悪魔で候」の主人公にも少し通じるパンクでクールな目つき鋭めの感じですね。
高梨さんのインスタグラムに、HIDEさんのイラストが載せられたりしているので、HIDEさんのファンなのではないかと思います。
とにかく、そんなクールイケメンの黎が着物で登場するわけですね。
そして、澄の願いが成就するまでは澄を主人として、陰日向になって献身的に尽くすわけです(無表情のままで笑)。
萌えますね笑
ところで、この漫画の登場人物にはそれぞれイメージカラーがあります。
黎は黒ですね。
そして、澄の初めての恋人となるパーフェクト好青年の真白(ましろ)君は白。
澄は若返りすると「スミレ」と名前を変えますからすみれ色。
物語の後半に紅担当の人も登場します。
さて、本筋に戻りましょう。
若返って高校に通い始めるスミレ。
やはりジェネレーションギャップを感じながらも、その度に黎がサポートして、恋や友情を謳歌し始めます。
スミレのキャラクターもいいですね。
真面目で、優しくて、自信がないけれど黎に叱咤激励されながら強くなっていく健気な女性が魅力的に描かれています。
私も、高校を卒業して20年ほど経つのでございますけれど、振り返ってみると本当に貴重な3年間でした。「スミカスミレ」を読みながら、生活の心配などもせず、肩書きなども気にせず、ただただ無邪気にまっすぐに生きていた時間を思い出しました。
青春期の恥ずかしい過ち(?)も色々ありますから、あの頃に戻りたいとは思いませんが笑。
スミレが学校に来ていないクラスメートの家を訪れるシーンがあります。
「女子の集団が面倒臭くてもう高校を辞めるしどうでもいい」と言うその友達にこう話します。
「60歳のおばあさんがいたんです
おばあさんの人生には
たったひとつ思い残すことがありました
だけど いくら思い残しても時間は戻らない
そのうち思い残しているという気持ちにフタをして生きてきました
…だからもし 奇跡が起きて 時間が戻ったら
今度は自分の思うように生きてみようって思ったんです」
この一件がきっかけで、スミレは本当の友達が出来ます。
友達が出来たことを、黎に報告する嬉しそうなスミレを見ると、なんだか涙が出てくるのです。
このセリフにひょっとしたら、この作品のメッセージが凝縮しているのかなと思います。
高校であろうがなんであろうがいいのですが、自分が60歳になった時に後悔のない生き方をしているかな?
「そのうちに」と思って、
「思い残していることにフタをして」
いないかな?
そう思って、私は転職を決めました笑
あと、作品の後半で出てきますが、澄の60年の人生を決して否定はしていません。
その60年があったからこそ、スミレの魅力が発揮されるわけで、必要な60年なのですね。
さて、前半は高校生活編です。
真白君が命に関わる病になってしまい、スミレは真白君を助けるために自分の生気をあげてしまいます。
再び歳を取り、またつつましく生きようとする澄を見かねた黎が再び自分の記憶と引き換えに生気を授け失踪してしまいます。
スミレは嘆き悲しみながらも、黎がくれた人生を生きようと自宅を売り払って学費に当てて進学するところで前半が終わります。
真白君とも一旦お別れです。
真白君は、スミレが本当は60歳ということを知って、別れを受け入れるわけですが、そのあたりもなかなか男前に描かれています。
真白君は永遠の好青年ですね笑。
では、後編に続きます。
コメントを残す